今年もツールドフランスの季節だ。
俺はこの季節を毎年楽しみにしている。
この時期だけはJ-Sportsを契約し、画面にかじりつく。
すげー面白い。大興奮。
ビールを片手にああでもないこうでもないとコメントする。
美しいフランスの風景はまるで一緒に旅をしているかのような気分を味わえる。
栗村氏とサッシャ氏の解説コントも楽しみの一つだ。
今年はポガチャルが圧巻の走りを見せている。
マイヨ・ジョーヌ獲得はもちろん、ヤングライダー賞の獲得も堅いだろう。
やはり毎年の3大ツールの盛り上がりは最高だな。。。
夜は更ける
今日もレースが終わった。
熱いレースだった。
またポガチャルが区間優勝だ。
最後のスプリントはマジで盛り上がったな。
1位と2位の差は本当に僅差だった。
うむ、少し酔っ払いすぎたかもしれない。
さて、今日も眠りにつくとしよう。
・・・。
眠れない。
おかしい。
いや、なんだこの湧き上がってくる感情。
そうだ。
今の俺、すげー普通。
すげー普通のサイクリスト。
「普通が一番難しい」なんていうけど、嘘だな。
だって多いから普通なんだよ。多いってことはそれだけ簡単ってことだ。簡単だから多いんだろ。
ぶっちゃけ、やっぱりあんな華やかな世界を見せられたら羨ましいと思うし、表彰台の上からの景色、見てみたいし。
俺だって昔は結構すごかったんだよ。
小学生の時とか、リレーの選手になったりしたし、成績だっていつもクラスの上の方で。
それなりに名の通った大学にも入ったし、
今の会社で自分の稼いだ給料でロードバイクを買った時は親も喜んでくれた。
ロードバイクを持ってないやつだっているし、持ってるだけで乗らない"ニートローディ”なんて奴らもいる。
それに比べたら頑張ってる方だ。
・・・。
今まで、何度も何度も変わろうと決心してきた。
目標を決めて毎日必ず実行しようと思ったり、仕事が終わって家に帰ってきてからもトレーニングしようとするのだけど、
でもダメだった。
「やってやる!」そう思ってテンションが上がっている時はいいけれど、結局何も続かなくて、3日坊主で終わってしまって、もしかしたら、「やってやる!」と思ってた時より自分に対して自信を失ってしまって、そんなパターンばかりだった。
変わりたいと思う。
でも、いつしか変わりたいという思いは、どうせ変われないという想いとワンセットでやってくるようになっていた。
いつか変わらなければ。
何かを変えなければ。
きっかけさえあれば。
いつもそう思っている。
サイクリスト神・ポガチャール降臨。
「おい、起きろや」
聞きなれない声にまぶたをゆっくりと持ち上げた瞬間、眼球が飛び出るかと思うくらいの衝撃を受けた。
なんだ、コイツは!?
枕元にヘンなのがいる。
象のように長い鼻。ぼってり大きな腹にピチピチのウェア。
そしてヘルメットの隙間という隙間からアホ毛がはみ出している。
こんなヤツが、
長い鼻をぷらぷら揺らしながら、目の前にいる。
(だ、、、だれだコイツ・・・?)
「だれやあれへんがな。
ポガチャールやがな。」
(ポガチャール・・・?ポガチャルじゃなくて、ポガチャール?)
「お前、そんなんやったら2000%成功でけへんで。
ワシのように誰よりも強く、誰よりも早く走れるようになりたいんやろ?
ならな、ワシが常日頃から心がけている習慣をお前に授けたるで。」
ゴクリ。。。
(解説)
これからサイクリスト神「ポガチャール」から出題される課題を紹介していく。
これらの課題はそれほど難しいものではない。
しかし、あなたの人生を大きく変えるほどの効果を持つものである。
あなたの夢や目標(表彰台に立ちたい、お金持ちになりたい、有名になりたい、自分にしかできない大きな仕事がしたい、自分の持つ才能を十分に発揮したい、成功したい・・・)を実現するための能力を身につけることができるだろう。
これらの課題の中には一見、「そんなことをしても速く走れねーだろ」と疑問に思うようなものがあるかもししれない。
単なる迷信か、非科学的な内容だと感じられるものがあるかもしれない。
しかし必ず実行して欲しい。
これらの課題はサイクリスト神のいう通り、過去に大きな仕事を成し遂げた偉人たちが通過した課題でもある。
実行し、その効果を実感してみてほしい。
それでは一度大きく深呼吸をして、
課題に取り掛かろう。
以下にポガチャールからの課題を記載していく。
課題1:ビンディングシューズを磨く
「ホンマにええんやな?」
ポガチャールは俺の顔を覗き込むようにして言った。
不安がないわけではなかった。いやむしろ不安だらけと言ってイイだろう。
ふざけた象の頭、ヘルメットから飛び出したアホ毛。たるんだ腹。
そんな、神々しさのかけらもないようなサイクリスト神に、俺を変えるだけの力があるのか?
だが、とにかくやってみるしかない。
こんな生活を続けていても、1流のサイクリストになれる日が来るはずがないのだ。
意を決し、覚悟はできたと伝える。
「ええ心がけや。」
ポガチャールはタバコの煙を長い鼻から吐き出しながらゆっくりとうなずいた。
「ついてこいや」
ドキドキ・・・。
どこに連れて行かれるんだろう・・・。
ポガチャールは玄関に向かうと、床を見下ろして言った。
「ビンディングシューズ、
磨けや。」
は?
「せやから、ビンディングシューズ磨けゆうとんねん」
そしてポガチャールは玄関に無造作に脱ぎ捨ててあるビンディングシューズを指さした。
「よう見てみいや、お前のビンディングシューズ。めちゃめちゃ汚れてるやんけ。」
これは普段、俺が履いているビンディングシューズだ。こうして改めてみてみると、土や砂がところどころについて汚れているし、変なベトベトの液体みたいなものもついている。
靴の管理としてはかなり悪い部類に入るだろう。
いや、しかし待て待て待て。
ビンディングシューズなんて磨いたところで速くは走れねーよ。
もっとこう、速く走れる人だけが知っている秘密のトレーニング方法とか教えてくれよ。
「お前、フルーム君知っとる?」
フルーム?
ツールで3連覇を成し遂げた伝説の選手、クリス・フルームのことだろうか?
「せや。そのフルーム君や。
ええか、フルーム君はな、他の選手が先に帰っても、ずっと残ってビンディングシューズ磨いとったんや。
彼はな、小学生のころからそうしとんのや。『神聖な商売道具を粗末に扱うことは考えられない』言うてな。
そういう仕事に対するまっすぐな姿勢があるから、ずっと世界トップチームのエース張れてたんやで。」
はぁ、それは知らなかったな。
「ところで聞くけど、自分の商売道具ってなんや?」
うーん???ロードバイク?
「ビンディングシューズや!ちゅうか話の流れからしたらここは確実にビンディングシューズやがな。
ええか?お前がチャリに乗る時も、コンビニで買い物するときもビンディングシューズは気張って支えてくれとんのや。
そういう自分支えてくれてるもん大事にできんヤツが成功するか、ボケ!
完璧に磨かれたビンディングシューズを履いていたフルーム君はな、
レース中の大事な局面で不幸にもトラブルで自転車が走行不能なった時、チャリを降りて「ビンディングシューズで走る」という伝説を残した。
ビンディングシューズだけはフルーム君を裏切らなかったんやな。」
いやいや、おかしいだろ。
どっちかって言うとシューズよりチャリのメンテやっとけって話じゃね?
やっぱりコイツの言ってることはうさんくせーわ。
「お前、、、」
?
「今まで、自分なりに考えて生きてきて、それで結果出せへんから、こういう状況になってるんとちゃうの?」
ギク・・・。
「お前が【速く走れへん一番重要な要素】満たし続ける限り、お前が表彰台に登ることはあり得へんで。」
ぐぬぬ。。。
なんなんだ、速く走れない一番重要な要素って。。。
「速く走れへん一番重要な要素はな、【人の言うことを聞かない】や。
当たり前やろが。速く走れるように変わりたいと思っとって、でも今までずっと変われへんかったっちゅうことは、それはつまり、【自分の考え方にしがみついとる】ちゅうことやんけ。
お前が速く走れないのはなぁ・・・今さっき「ビンディングシューズなんか磨いて(そんなことして)意味あんの?」と考えた、まさにその考え方にすべての原因があるんやで。」
俺はポガチャールに完膚なきまでに叩きのめされた。
完璧に論破されてしまった。
くっそおおおおおおおお!!
結局俺はポガチャールの前ビンディングシューズを磨くしかなった。
「なんやそのやり方は。もっと優しくみがかんかい!『いつも頑張ってくれてありがと~ありがと~』て感謝しながら磨くんや!」
クソッ!こいつ、これで何も変われなかったらタダじゃおかねえぞ!
つづく。
ビンディングシューズを磨く。
第2話はコチラ↓💡
※この物語はフィクションです。
本記事は累計420万部売れた、“日本一読まれている自己啓発小説“水野敬也さん著の「夢をかなえるゾウ1」のパロディです。